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『聖なる殺戮』
『聖なる殺戮』 PN:風早 瑞樹 2002.09.24 1086字
 PHSで書いたSF掌篇です。文字制限が1000字だったので、PCで加筆して仕上げました。
 実はこの作品は、私の「神学理論」への風刺でもあったりします(苦笑)。

聖なる殺戮
風早 瑞樹


 その村にハイ・ソサイエティたちがやってきたのは、太陽が水晶宮に入る季節のことだった。
 ヴァニラは覚えている。その日のことを。
 彼女は年下の子供たちと、草原で花を摘んで遊んでいた。すると突然空から輝く船が降りたち、白い装束に身を包んだ男性とも女性ともつかぬみな似たような顔立ちの一団が、音楽に包まれて姿を現したのだ。
 それがアルク村の滅びの始まりだった。

 ヴァニラは母親に教わっていた。この世界には、進化した人間、ハイ・ソサイエティが存在するのだと。彼らは真の神に祝福を受けて常に正しいことをするのだから、すべて彼らの言う事を聞いていれば間違いはないのだと。
 喜々として村人たちは彼らを歓迎した。白い服の胸にけして枯れない薔薇を差していることから、ホーリーローゼスとも呼ばれる彼らは、高らかに宣告した。
「我らが女神がついに狂える創造主を打ち倒した。ついては、間違って創られたこの世界を浄化するため、我らは君たち人間を混迷の世から救い、光の生命と一体になるために光の銃で肉体を捨てる儀式を執り行うという崇高な使命が与えられた。喜べ、アルクの村人たちよ」──と。

 儀式は一日一人と定められていた。ヴァニラの両親も、喜んで胸に血の花を咲かせた。そして、残るは子どもたちだけとなった。
 ヴァニラお姉ちゃん、こわいよ……と口々に震えて、十人に満たない村の子どもたちがヴァニラの家に集まってきた。
 なにも心配することはないわ──私たちは、同じ光になるのだから……と諭しつつも、ヴァニラは迷っていた。
 本当にこの世界は間違っているのかしら。花も、木々も、小鳥たちもみな美しい。そうだ、この思いを忘れないようにしなければ。彼女はある決心をした。
 翌朝、みなを連れて草原へゆく。この自然の美しさと純真にたわむれる子どもたちの笑顔を消したくはない。ひとつ頭を振って、儀式に向かう予定の少女の手をとった。
「さあ、マリアンヌちゃん、光の儀式へゆきましょうね」
 そばかすの浮いたマリアンヌがコクンとうなづく。二人で、村の中央広場に歩いてゆく。
 儀式は始まり、まさにマリアンヌが殺されようとする瞬間。
 ヴァニラが走り出た。
「なぜ命を奪うの!? 殺すならわたしにして!」
 言い捨てざま、銃を持った彼らの前に身をさらした。
 そして、ナイフを深々と自らの胸に刺す。
「愚かな娘だ。救いを捨てるとは」
 そしてマリアンヌは悲鳴を上げながら《浄化》された。

 数日の時が経ち、船が飛び立った。逆十字の閃光が地上を走り……
 あとには茫漠と荒野が広がっているだけだった。
(了)

2002.09.24

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