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仮題『アモラル』2083字
 久々に書いた小説です……が、走り書きです。
 そして途中で息切れして急展開の説明不足になってますw
 テーマは――なんだろう。危険な恋?
 ジャンヌの曲でいうと「ROMANCヨ」風味です(知らない人はわからないってw)
 「続きを読む」からどうぞ~^^

アモラル
水瀬 瑞樹


 「わかってるだろう。僕が結婚していて、子供もいるってことは」
 放課後の社会科研究室。そこに一人だった久瀬憲彦先生を見つけ、私は意を決して告白したのだ。
「わかってます。それでも先生が好きなんです。どうしようもない程に」
 久瀬先生は深く煙草の煙を吐きながら、やれやれといった仕草で髪に手をやった。
「……知っていたよ。その視線に気がつかないほど僕は鈍感じゃない。だが、わかるだろう? それに気づいた素振りを見せるわけにはいかないことは」
 私の胸は高鳴った。気づいて、そして悩んでくれていた? 久瀬先生が、私のことを?
「僕だって、綾瀬のことは稀にみる聡明な生徒だと思っていたし、正直なことを言えば、好きだ。許されるのなら、抱きたい。だが、それをする訳にはいかない」
「どうして? 私が高校生で、貴方が教師だから? それとも奥さんや娘さんを裏切るわけにはいかないと? そんな俗的な倫理観にとらわれていらっしゃるの? 久瀬先生ともあろう人が」
「いいや」
 そう言い、じっと虚空の一点を凝視してから、先生は私の瞳を覗き込んだ。
「教師も生徒も関係ない。家内も娘も、情事という悪徳に対しては、何ほどの価値もない。僕が恐れるのは……」
 一旦言葉を切る。私は息を呑んで続きを待った。
「君の未来に傷を残すことだ」
「……何それ」
 白けた気分がそのまま言葉に出てしまった。
「そんな風におとしめられる筋合いはないわ。そんなの私が決めること。違いますか?」
 先生は穏やかに微笑んでいる。私は顔が紅潮した。
「私にとっては、一生の恋なんです。もし将来後悔しても、傷だなんて、思いません」
「君は若いからわからないだろうな。そう思い込むことがどれほど危険なことか。
 ――よし、こうしよう。僕に対する愛情のレベル、いやそれに達しなくてもいいから、『抱かれてもいい』と思える男を作れ。そしてそいつに処女を捧げろ。話は、それからだ」
 別人のように冷たい眼で、久瀬先生はそう言った。話は終わりとばかりに背を向ける。
 逆光のその背に、かつてないほどの障壁を感じて、気圧された私はすごすごと部屋を後にした。

 それから半年後。高校を卒業した私は、同じ大学に進学した慎也と肌を重ね、そして別れた。一方的に。
 久瀬先生に経緯を話し、逢う約束をとりつける。
 約束の喫茶店に入って、私は愕然とした。なんと久瀬先生が、慎也と同じ席で談笑している。困惑しつつもそちらに足を向けると、久瀬先生が手を振って私を呼んだ。
 驚いたのは慎也も同様だったようで、気まずい空気が流れる。
 記憶にも残っていないような会話の後、久瀬先生はこう言った。
「相川君。実は私は、綾瀬君とつきあっていたんだ。高校にいた時からな」
「なっ――!」
 私は絶句した。この大嘘つき。なんてことを言うのよ!
 慎也も目を白黒させている。
「その後、彼女が君の求めに応じなかったのも、そのためだ。悪いことをしたな」
 そんなことは欠片も思っていなさそうな眼で、微笑う。
「誤解よ、慎也! 私、そういうつもりじゃ……」
「おや、違うのかい? 佐穂、そういうことなら別れてもいいんだぞ? ずっと相川君と幸せに暮らしたまえ」
 初めて下の名前を呼んでくれた! ……じゃなくって。
「どういうつもり? 先生、こんなことして、楽しいの?」
「ああ、楽しいね。君の愛を試せるからな。これだけ彼に深い傷を負わせたんだ、佐穂、君はもう、元には戻れない」
「ごめんね、慎也。どんな償いでもするから……!」
 慎也は傷ついた子猫のような眼で私を見上げた。
「そんなもの要らないさ。もう誰も信じない。お別れだ。今度こそ、永遠に」
 そう言って慎也は席を立とうとする。慌てて引きとめようとする私を、久瀬先生が抱きすくめ、そして、
 ――キスをした。
 あまりにも濃厚な、くらくらとした口づけで、私は窒息しそうになった。
 視界の隅に、呆然として肩を落とし、足早に店を出て行く慎也が映ったが、私にはどうすることもできなかった。

「離婚したって本当?」
「ああ、もう届は出した。娘はあちらが引き取ることになったし、問題は全て片づいている」
「じゃあ、本当に、本気で私と……?」
 憲彦は笑って答えない。
 日本海に面した、古い旅館で、私たちは愛し合った。
 私はもう、地獄の底までこの人について行くと決めていた。
 海に迫り出すように、岬の突端の樹が揺れている。
「なんだか物悲しい景色ね。どうしてこんなところに?」
「それはね――」

 あっ、と思った時には遅かった。私は後ろから突き飛ばされ、体が宙に浮いていた。
 私は久瀬先生……憲彦の姿を追い求めた。
 いつものように、悪魔的な笑いでこちらを見ている。そう確信して。
 だから崖の上で、涙を流して顔を歪ませている彼を見つけたときには、まず驚きが先に立った。
 もっと憎んでも恨んでも足りないようなことをされたのに、私の胸に湧いたのは、憐れみだった。
 なんだか時間の流れがずいぶんと遅く感じる。
 何故、私はつきあっている間に彼の過去をもっとよく知っておかなかったんだろう。
 それが私の、最後の思考だった。

(了)
2006.10.18


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テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

[2006/10/18 23:47] | 創作の試み | page top
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