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創作メモ
「僕が生きているのは、一体“誰”だ?」
「何を言っているんだ?」
「今まで僕は数多の人生を生きてきた……」
「前世ってことか?」
「違う。一つの共通意識体が、全ての人間の人生を“生きて”いるんだ。僕のも。もちろん、君の人生もだ」
「そんなものは感じないが」
「それはそうだろう。そいつが感じ取れるのは、あくまで追体験、リプレイに過ぎないんだからな。もちろん僕だって、明確に認識したわけじゃない」
「何を言っているのだか、よくわからないんだが……」
「ユングの集合的無意識って、聞いたことないか?」
「まあ、一応は」
「そいつは実際に“存在”しているんだ。過去から未来の全人類の人生を、個別にしかも“同時に”生きる能力を持って」
「そんなやつが実際に存在していたら、そりゃ化物だな。どれだけ処理能力高いんだよ」
「いや、通常の意味で“存在”しているんじゃないと思う……自意識さえ持っているかどうかわからない。処理能力に関して言えば、人間の脳の使われていない部分を“間借り”しているんじゃないかな」
「そうだとしたら気持ち悪いな」
「それは安心していいと思う。たぶんこいつは、人間の意識には一切の干渉ができない。人類の誕生と同時に生まれた、副次的存在だから」
「あまり安心できないんだが……」
「いや、だがそいつがいる限り、君にしても僕にしても、実質的に“不死”ということになるよ。すべての人生のログが、そいつの中には残るんだから。たぶん人類滅亡後も、別の次元で」
「うーん、理屈はわかるけど、こっちはそいつになり代われないんだろ? なら普通に死んで終わりじゃないのか?」
「普通の意味では確かにそうだね。でも死後のことなんか誰も知らないんだし、こいつになんとかアクセスできれば……」
「でもあちらさんには自意識もないんだろ。かなり無理があると思うぞ」
「いや、人類が誕生して間もないころならともかく、これだけ人数も増えて複雑化していれば、ブレイクスルーを超えて“進化”しているかもしれない。すでに、あるいは、未来のいつか」
「それじゃ自意識を持って全人類に寄生してるかもしれないのか? かなりぞっとしないな」
「それは無神論者ならではの感覚ってやつじゃないの? 『全ての思考はお見通し』なんて、神を信じる人の間では当たり前の発想だよ?」
「いや、まあ、そうかもしれないが……。とすると、こいつは神の亜種として考えていいのか?」
「絶対性や創造の要素はないけどね……。まあ時間は超越してるから、遡って宇宙を創造した、とかでもいいんだけどさ。ただ、人類に一切干渉できない神、ってのも面白いじゃない」
「そこはお前さんの意地か」
「ああ、それは認める」
「でも、相互に干渉不能でおまけに別次元じゃあ、その存在は証明できるのか?」
「難しいけど、活動の痕跡くらいは観測可能だと思う」
「やっぱり脳の中とかを調べるのか?」
「いや、そのアプローチじゃ無理だと思う。可能性があるとすれば、別の次元と接するかもしれない場所……。パルサーやブラックホール、あるいは素粒子加速器の観測結果から、何かがわかるかもしれない」
「具体的に、どういう手法で?」
「……わからない」
「じゃ駄目じゃん」
「うん。……でも“観測者問題”を考えるとこれがギリギリの線なんだよ」
「観測者問題って?」
「量子力学のさ。簡単に言うと、ごくミクロの領域では、観測者が観測するまで物理的現象は定まらないんだ」
「それがこれとどう関係してくるんだ?」
「人間が“知ってしまう”ことによって、世界のかたちが激変する可能性があるってこと」
「ええ?」
「僕としては大歓迎だけどね」
「なんかエデンの園みたいな話だな。知恵の実とか何とか」
「ひょっとしたらそれも、観測者問題を扱った逸話なのかもしれないね」
「まさか」
「うん、冗談だよ」

 ぐだぐだのまま未了――
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[2007/03/29 21:57] | 創作の試み | page top
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